僕も自分の自転車で使用していますが、「Chris King(クリスキング)」はハブやヘッドギア、ベアリングなど、自転車の重要な部分を担うパーツを40年にもわたり製造する世界でも屈指の老舗メーカー。
その品質は世界一と言っても過言はないと思います。
「永年保証」、これが全てを物語っています。
そんな自転車パーツを作るメーカーですが、フレームも作っています。
そのブランド名は「Cielo(シエロ)」。
ロゴにも入っているように、もともとは1978年、クリス・キング自らがフレームを作り始め、そこから4年ほど作っていたみたいです。
フレームの生産は一旦やめて、パーツを作る会社へと変わって行ったんですが、2003年、この地ポートランドに会社を移転してから再びフレーム作りも始めたそうです。
この理由は会社見学ツアーの最後に語ってくれました。
が、その話は後ほど。
フレーム作りの工程を見ながら、
「昔は全てが手作業だった。でも今はこの機械一つで・・見ててご覧なさい、今からこのフレーム作りの工程で一番エキサイティングなシーンが見られるぞ」
と、キング氏。
フレームへの繊細な加工も、ガチャン。
「ほら、(一瞬で)出来上がりだ!(笑)」
今度は火を使って溶接。
「彼のこの技術は相当なものだ。私ももう彼にはかないっこない。」
と、その作業を見つめるキング氏。見られる彼も緊張しただろうなー、社長でありレジェンドにずっと見られてるんだもの(笑)
フレーム本体を作る横には、その形作られたフレームをペイントする作業場が。
色が塗られ、そこでフレームは完成。
「この完成したフレームの何本かは名古屋のCircles(サークルズ)に送られる予定だぜ」
と、指にフレームの新色サンプルをはめながら笑顔で語るシシップ氏。
会社見学はまだまだ続きます。
「我々はアルミを使ってパーツを作っている」
とキング氏。
「これを見てくれ」
そこには何やら銀色の塊が。あ、さっき社員食堂でケースに入れられて飾られたやつだ
「物を作る工程ではどうしても廃棄物が出てしまう。環境のことを考えると、なるべくその無駄を少なくしたい。これは、その想いを徹底して考えた先に出来たものなんだ」
キング氏の横には、物を作る様々な工程で生まれたアルミの切れ端がドラム缶いっぱいに入っていました。
下には様々な工程でアルミについた工業用油がしたたりきったのを受け止める容器が。
もちろんこの油も環境に負荷をかけないもので、リサイクル可能なもの。
また機械自体に良いものを使っている、と。
油にこだわることによって通常5年くらいでダメになってしまう機械の寿命がここでは10年以上使えているそうです。
そう、機械自体もしっかり長持ちさせる。
話をアルミに戻して、今まではこうやって切れ端をドラム缶いっぱいになるまで貯めて、そのドラム缶を置くスペースが相当必要だったみたいなんです。
そこで、キング氏はこの機械を購入。
切れ端だったアルミを一気に押しつぶし、先ほどの丸いケーキのような形状にする。
この工程によって、アルミの削りかすからほぼ全ての廃油を回収できると同時に、今まで必要だったドラム缶のスペースが大幅に空く・・つまり、そこでフォークリフトなどを運転する社員さんたちの安全面も増す・・・。
もう僕、このあたりで泣きそうでした。
ロボットアームが作業する部屋を見つめながら、
「あの作業は油まみれになってしまうんだ。だからこそ機械にやってもらう。だって、その作業担当のスタッフが「はぁ、今日も真っ黒になるのか・・」って月曜からブルーになるのは嫌だろ?」
自分が作っているものに誇りを持つのは当たり前で、それ以上に、これほどまで、それを作る作業で生まれる環境への負荷や、また、そこで働くスタッフ たちの行動や気持ちまで徹底して考える・・・
もう泣きそうでした。
クリス・キング氏の心の器の大きさに、そして、宇宙のように広がってるであろう彼の頭の中を想像すると。
人間ってここまで繊細に、そして、深くものを考えることが出来るんだって。
その後もいくつかの工程を見せて頂きました。
ベアリングの中に入れる小さなボールを細かく選定し、それをパーツに入れていく作業、
この小さな小さなボール一つ一つの品質までチェックしているそうです!
完成品をテストする作業、
完成した部品が商品として棚に積み上げられてるところも。
すぐに自転車の部品として活躍してもらうものに華美な包装はいらないという、これもまたクリスキングのモットー。
「私たちは自転車の部品を主に作ってるメーカーだが、何故フレームも作り、自転車の完成品まで作っているか教えてあげよう」
「自転車が完成した姿をちゃんと見ないと、それぞれのパーツを担当してる人間は一体自分が毎日何を作ってるのか理解できなくなってしまうだろう。」
クリス・キング氏のツアーの締めの言葉は・・
「Love Of Bicycle, Romance Of Bicycle」
あえて訳しません。
英語という自分にとっての第2言語で、ここまで心にズドンと響いた言葉は今までありません。
今年37歳になる僕ですが、今後の人生の大きな指針をくれたこのクリス・キング氏自らによるツアー。
クリス・キング氏、ジェイ・シシップ氏に、そしてこのツアーをアレンジしてくださったCircles田中社長、現地でアテンドして下さったSimWorksりえぼうさん、本当に本当にありがとうございました!
追伸
もっともっと詳しく「Chris King(クリス・キング)」を知りたい方は、是非、Simworksさんのブログ、
「Kingをめぐる冒険(上・下)」をご覧ください!