MASHと語り続けた夢、ポートランドでのライブが実現したあの夜のこと

MASHと語り続けた夢、ポートランドでのライブが実現したあの夜のこと

会場は、『ポートランドロースティングコーヒー』、ここに100人以上が集う!

MASHと語り続けた夢、ポートランドでのライブが実現したあの夜のこと

「MASH、絶対、ポートランドのカルチャー好きだって!」「いつかポートランドに来てもらいたんだよね、で、向こうで歌ってくれたら、最高だよね。」
何年も前からMASHと会うたびに言い続けて来た言葉。
多分、出会って、仲良くなってからだから、もう10年以上言い続けて来たかもしれない。特に、ポートランドの友人、ポールがMASHの歌詞に惚れ込んで好きになってからは、現実味を帯びたトーンで誘い続けて来ました。
でも、その頃、MASHに言っていた、「ポートランドで歌ってよ」は、ライブという形ではなく、もっと気軽なものをイメージしていて、例えば、僕らと旅行をして、食事の後とかに、数人の友人たちの前で歌ってくれたらってものでした。なのに、あんな夜が生まれるとは・・・

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会場は、『Portland Roasting Coffee (ポートランド・ロースティング・コーヒー)』。
元々は、卸専門でポートランドのコーヒー業界を牽引していた会社が、小売に力を入れるため、数年前に作った、カフェ&イベントスペース。
カフェは、ゆったり50席ほどあり、地域の人たちがそこで会話を楽しんだり、学生が勉強をしているのが当たり前の光景。
カフェの横に設けられた大きなイベントスペースは、スタンディングならば、100人以上収容可能なほどの大きさです。僕らツアーメンバー33名と、ポールが誘った現地の日本人コミュニティーの皆さん70名ほど合わせて、まさにそれくらいの人数がライブを観ることに。
MASHにとっては、海外初ライブ。初ライブがいきなりそんなに大きなキャパになるなんて、まさか本人も想像していなかっただろうし、無責任なことに、企画者側の僕も全く予想だにしていなかったです。

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リハーサルから既に始まっていた、言葉の壁を超えたMASHのライブ!

リハーサルから言葉数が少なくなるMASH。
日本のライブでも、普段、リハーサルから見ることなんてないので、海外だからとか、その違いはわからないけれど、とにかく高まるその場の緊張感。
この日は、突如、三味線アーティストの福居一岳(ふくいかずたか)さんが飛び入り参加することになり、まずは福居さんの音出しチェック。福居さんはポートランドの日本庭園の手入れなどもしている庭師としての顔も持つ方で、実は、僕らはこの日のお昼、彼に日本庭園をガイドしてもらっていたんです(この日本庭園ツアーについてはまたいつか)。英語も堪能な福居さんは、音響スタッフとのやりとりも問題無く、簡単に音出しチェックだけして、リハ終了。

続いてはMASHのリハーサル。言葉の問題に関しては、僕が間に入って通訳をしようと思っていたけれど、僕も音楽の専門的な言葉をそこまで知っているわけでも無く、また、音の繊細な調整など、ニュアンスを伝えるのが難しいかもと、覚悟してリハーサルに臨みました。
「ギター、OK?」片言の英語でMASHが「ジャーン」と、最初の音をかき鳴らし曲を弾き始めた瞬間、真剣な眼差しで見つめながら、細かく調整を始める音響スタッフ。
アルペジオの曲の時にマイクのリバーブをもう少しだけかけて欲しいんだけど、アルペジオって英語でなんて言うんだっけ?」そんな使ったことのない言葉だから、調べて伝えようとするやいなや、「この感じの曲の時は、リバーブ、もう少し欲しいんだろ?」二人が、言葉を超えて音楽で会話をする瞬間を目の当たりにしました。そして、今振り返ると、この時からMASHのライブは言葉の壁を凌駕し、始まってたんです。

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三味線から始まり、会場のボルテージは一気に高まり、そしていよいよMASHのライブへ・・

開演1時間前になると、続々とやってくるポートランド在住の日本人コミュニティの皆さん
もちろん、日本人だけではなく、彼らのアメリカ人のパートナーなども来場し、会場の至る所で、「Long time no see! (久しぶりー!)」などの声も飛び交い、ちょっとした同窓会のような雰囲気に。
『Love It, Portland-Oregon』ツアーの皆さんも到着し、いよいよ会場は満席になり、賑やかで和やかな空気が充満します。
しかし、その和やかさとは裏腹に、僕自身の緊張感は高まるばかり。抱えていた緊張感が一体なんだったのか、この時はまだ理解できていませんでした。
いよいよ開演時間。まずはポールがマイクを持ち、いかにしてこの夜のライブが実現することになったのか、これまでの経緯を語りました。全ての始まりが『スイートオブオレゴン』を立ち上げた長谷部さんのおかげであること、そして、この会場に来てくださったお客さんへの感謝の言葉も述べられました。

ポールからマイクを受け取り、ここからは、本業でもある僕がMCを。
「まずは日本の伝統的な三味線の音から楽しんでください、ミスター、カズタカ、フクイー!」師範の資格を持つ福居さんの三味線がオープニングアクトという、なんとも贅沢なステージが幕を開けました。
福居さんの奏でる一音一音は力強く、かつ、三味線なんだけど、どこかジャズのようなグルーブも感じ、自由に、楽しそうに音が跳ねていました。
福居さんのライブが終わると、これまた弾けるような拍手と歓声が沸き起こり、会場のボルテージは一気に高まりました。

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ポートランドにいながらも、思い描くのは自分の故郷であり、大切な人。

間髪入れず、このまま、MASHのライブへ。
「彼はかつてHIPHOPを愛し、ラップをしていましたが、今はギターを手に持ち、シンガーとして活動を続けています。僕らのツアーメンバーのほとんどが愛知県からやって来ましたが、まさに僕たちの街が誇るミュージシャン・・・MASHです!」
ハロー、アイムMASH、フロムジャパン!」片言の英語で挨拶をし、曲を始めるMASH。
正直、後でこうして振り返るまで、なんの曲で始まったのか覚えていないくらい、僕は緊張していました。しかし、ステージの上のMASHは飄々としているように見えました。何曲か披露し、合間合間に英語でMCを入れていたMASH。

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しかし、「この中で、日本語を理解する人ってどれくらいいるんですかね?」とMASHが尋ねると、会場のほとんどの人が手を挙げ、「結構いるんですね(笑)じゃあ、もうここからは日本語で話します。もし、わからない人がいるようであれば、隣の人が通訳してあげてください!」「いつもに比べて緊張していないななんて思ってたんですけど、違いました。2ヶ月前にこのライブが決まってから、ずっと緊張していたんだってのが今わかりました(笑)」
そうか、MASHも緊張していたんだ。そして、この瞬間から、会場の空気が変わりました。もしかしたら、観る側にも、言葉だったり、詳しくは曲を知らないだとか、どこか身構えていた緊張感があったのかもしれない。MASHが自分の抱えていた想いを赤裸々に伝えた瞬間、見えはしないけれどそこに張り詰めていた膜は弾け、その後にMASHから発せられた歌声によって、会場全体が包まれていきました。温かく、優しく、そして、強く。

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『7月6日』、『稲穂』、そして、『星が綺麗な夜に』。あんなにもポートランドでライブをやって欲しいと願っていた自分が、今、どこでMASHの曲を聴いてるのかわからなくなりました
歌の世界で描かれる、自分の故郷や思い出の場所。そして、人。まだまだしばらく側にいてくれるだろうって思っていた大切な人が、突然自分の目の前からいなくなる。
今回のツアーで旅してきた場所は全て、大切な父親との思い出の場所ばかり。その場、その場で感傷的になることはなかったけれど、いつだって存在は思い出す。そしてやっぱり思う、「側にいてよ(Stand By Me)」悲しみの涙、寂しさの涙でもあるけれど、MASHの歌の中で、久々に会えたことの嬉し涙が止まらない夜でした。

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MASHのポートランドライブレポ、基本的には同じ内容のものですが、『BARKS』の記事として載せていただきました。

『BARKS』の記事はこちら
https://www.barks.jp/news/?id=1000170242

そして、ポートランドから帰国直後、MASHとの対談ライブ『Beautiful Days vol.2』で、たっぷりとライブのこと、ポートランドでの滞在のこと振り返っているので、こちらもどうぞご覧ください!

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2019.05.06